新年のご挨拶
2017年の年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申しあげます。旧年中は、当協会の事業活動に対し、格別のご理解とご協力を賜り厚く御礼申しあげます。
昨年行われたアメリカ大統領選挙は、共和党トランプ候補が大激戦の末、勝利を収め、昨年6月のイギリスのEU離脱決定を上回る衝撃が世界を駆け巡りました。わが国の政治・経済に大きな影響を与えるアメリカのリーダーとなるトランプ氏の動向は、今後も注意深く見守っていかなければなりません。
さて、日本経済は、昨年末の急速な円安もあり、輸出産業を中心に一部の企業で業績は堅調に推移していますが、今年予定されていた消費税引き上げが2年半先送りされるなど、日本経済全体としては未だ閉塞感に陥っていることは否定できません。また昨年末の金融政策決定会合で、消費者物価指数2%引き上げの達成を2017年度中から2018年度頃へと後ろ倒しすることを日本銀行は発表しており、金融緩和を軸としたデフレ脱却のシナリオには暗雲が漂い始めております。このような状況の下、当協会の会員400社の大部分を占める中小企業の皆様方にとっては、景気回復の実感が乏しいと感じております。
対して、政府からは毎年、企業に対して春季労使交渉における賃上げ要請がなされ、特に昨年、京都においては24円という大幅な最低賃金の引き上げ目安額が示され、その金額を最低基準とした審議会運営がなされました。地方や多くの中小企業の実情に沿わない、政府主導での最低賃金引き上げの動きには疑問を感じており、当協会としても経団連や京都労働局に対して今後の最低賃金の審議のあり方について意見具申を行っております。
また、昨年11月の「働き方改革実現会議」において安倍首相から「昨年並みの賃上げ」と「4年連続のベースアップ実施」を求める発言がありました。過去3年の春季労使交渉では、政府からの賃上げ要求に最大限の企業努力により応えてきたことを、政府に認識して頂く必要があると考えております。そのため、経団連から出される「経営労働政策特別委員会報告」では、政府の要求に対し一言を付す記述がなされるよう強く求めております。
この「働き方改革実現会議」においては、長時間労働の是正や労働生産性の向上、女性や高齢者の能力の更なる活用、同一労働同一賃金の実現等についても議論が重ねられております。この内、長時間労働の是正は、過重労働の問題がマスコミでも報じられ注目を集めておりますが、これまでなじんできた働き方や時間の使い方を見直し、「長時間労働の是正」「生産性の向上」を実現することは容易なことではありません。しかし、企業がその魅力を高め、厳しい競争を勝ち抜いていくためには、避けて通れない喫緊の課題です。会員企業の皆様には、「働き方改革」に積極的な取り組みを進めて頂くことで、企業の競争力強化に繋げて頂けるよう願っております。IoT技術や人工知能の普及等による近い将来に予想される産業構造の変化に乗り遅れないためにも、労働者自身が持つスキルをさらに磨き生産性を高めることが必要であり、企業においては、積極的に人材育成に取り組んでいくことがますます重要になってまいります。今年の春季労使交渉では、将来の企業の成長に向けた働き方について、労使間で建設的な議論がなされることを期待しております。
「経営と人」に関する問題を事業の柱に据える当協会においても、この「働き方改革」は取り組むべき大きなテーマであると考えております。今後も、様々な形でこの問題を事業活動に取り上げてまいります。また、過去に縛られない新たな発想を大切にしながら、様々な事業活動を進めてまいりますので、会員の皆様のご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。本年も『寝ても覚めても会員視点』という精神の下、会員の皆様方の期待に応え、皆様と力を合わせて、京都経済の発展に力を尽くす所存でございます。皆様方の一層のご理解、ご協力をお願い申し上げますとともに、皆様方にとりまして明るい年となりますよう祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
三洋化成工業株式会社 代表取締役社長
京都経営者協会 会長 安藤 孝夫